「1時・・・・越野様・・ですね、 まだのようです。」
「そうか・・・いや、じゃぁいいんだ。 来られたらすぐに電話してほしいのですが」
「かしこまりました。」

麻理子はふと、龍の様子を気にして首だけを向きなおしたが、
なんとも幸せそうな満面の笑みを浮かべて見つめている龍を見て
もうどうでも良くなってしまった。
(たいした伝言じゃないのかなぁ・・・・順番・・寺山さんを先にしちゃったけど、
仕方ないわよね・・・)

それでもやはり伝言が気になって、もう一度龍を見てみる。
目が合ったことに気付いて 更に笑顔になる。 釣られて麻理子も口が開きそうになって、
あわてて口をつむった。

( かわいいんだけど・・・・なぁ・・・・はぁ・・・)

眉をしかめて俯く麻理子。

「どうかしましたか?」

聞きなれない声にハッとする。
寺山がまだ横で麻理子を見ていた。

「あっ、すみません、まだ何かありましたか?」

「えぇ・・・まぁ・・・・・」
寺山は 左の一刺し指で鼻を軽くこすると、

「今日・・仕事が終ったら・・・・付き合ってもらえませんか?」

「え?」

「あ、いや、 今度接待をするのに使う店の下見にねっ ハハハ ダメ・・かな?」

「ダメに決まってるじゃないですか!」

「え・・・」

即答したのは カウンターに身を乗り出してきた龍だった。