「確かにそうなんだけどね…」


「まあ、兎に角そんな話。きっと恭子が悔しがるわねぇ。〈カヲル〉に会えないの自分だけになっちゃうし」


「ちょっと、杏奈。恭子にそんな話しないでよね」


「何でよ。もうメールしちゃったわよ?加奈子――なーんか反応が変よ、怪しいなぁ」


最悪だ、せめて杏奈の会社だけは佐久間に事情を話してキャンセルして貰わないと不味い。


それ以前にこんな事には無理が在るに決まっている。ダミーなど使わなくとも、これだけの流れが出来ているのだ。


説得すれば佐久間も諦めてくれる気がする。今妙な事になるよりずっとマシな筈なのだ。


佐久間からは電話は無かったけれど、メールで状況を知らせてくれと連絡が入った。


仕方なく書籍とコミックに関して社の了解を取付けた事を事務的に伝えた。それと同時にどうしても会って話したい事があると追記する。


佐久間からのコールバックは深夜零時を回った頃だった。