谷女史は複雑な表情で私を見た。


「何か問題があるんですか?」


「そうね、部内で少し問題があるんだよ」


部内での問題?私には初耳だった。


「何ですか、それ。私は全然聞いて無いですよ?」


「企画の提案でさ…〈カヲル〉のインタビューやらグラビアの提案が複数出てきてる…まあ、当然だよね」


「ですね…事情を知らなければ私だって提案します」


「どうするかね。インタビュー程度は必要になるだろうな…そうなるとライターぐらいはうちから出さないと不味いよな」


確かにその通りだった。携帯小説の読者からは圧倒的な支持を受けているとは云え、一般の読者層には知られていない。


佐久間が映画化を仕掛けるにしても、今の掲載作品が完結してからの事だ。話題になるタイミングとしては少々遅い。


「明日の編集会議迄に、何か手立てを考えて来ます」


「悪いけどさ、そうしてくれるかな」


考えると言った処で、何も浮かんでは来なかった。私一人で考えられる筈はない、佐久間に連絡を取ろう。


どちらにしても、先程の会議の内容を伝えなければいけないのだ。


履歴に残った番号に掛け直した。呼び出し音は鳴るものの佐久間は出ない。留守番電話にメッセージを残して連絡を待つ。