「やっぱり裏があるんだな?実際、あの〈カヲル〉ってのは何者なんだよ。まあ、今は聞かないけどそのうち教えろよ」


「時期がくれば…ですねぇ。色々とあるんですよ」


「良いなぁ。現場は愉しそうだよな」


真田常務はわざとらしい素振りでそう話したが、私には案外本心なのかも知れない。


「あら、お戻りになられたら如何です?まだ大丈夫でしょう」


「良く言うよ。今更若い奴らに煙たがられるのはごめんだよ。まあ頼んだぞ谷、今回の創刊も随分ゴリ押ししたんだからな」


「わかってますよ。真田さんに迷惑掛からない程度に頑張ります」


「まあ、期待してるからな。高邑くん、君も頼むぞ」


「はい、ご期待に応えられる様に頑張ります」


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「編集長…教えてくれれば良かったのに」


常務が部屋を出た後、私は少しむくれてそう告げた。谷女史は笑いながら話す。


「加奈子は演技出来ないでしょ。それに実際のところ、どう転ぶか分からなかったからね」


「それはそうですけど…」


「まあ、むくれるな。とにかくこれで難関の最初は突破だね。佐伯も大人しくなるだろうけど…」