一通りの遣り取りの後、真田常務は考え込む様に目を瞑って黙り込んでいる。


静かな会議室では、誰もが常務が口を開くのを待っていた。


やがて常務が目を開けて、もう一度書類に目を通し静かな口調で話し出した。


「これだけ条件が揃っているのに乗らないわけにはいかんな。部署だどうだと言ってる場合じゃないだろ。なあ、佐伯くん」


突然、自分を名指しで話し掛けられた佐伯は反論すら出来ずに頷くしか無い。


真田常務はその姿を確認して会議室を見渡した。


「良いか。今回は会社のプロジェクトだと考える。高邑くん、立ちなさい」


今度は私が驚く番だった。「はっ!はい…」思わず素っ頓狂な声を上げて椅子から立ち上がった。


「先方の要望通りに君が全て担当したまえ」


それからもう一度室内を見渡して全員に告げた。


「不服な者はこの場で言いなさい。無ければ決定事項とするが…どうだね?」


誰も逆らう事は出来ないだろうと感じた。その通り、誰からも異論は出て来なかった。


「さて、その件はOKとして…私にも懸念はある。谷くん幾つか良いか?」