「お帰り、加奈子。どうだった契約は?」


編集部の連中の手前もある。〈カヲル〉がサイトでnoxへ連載を決めたと公言していても、実際に契約出来るかどうかを皆注目していた。


「大丈夫です。幾つか条件は出されましたけれど、今の作品含めてうちに任せてくれます」


「やったじゃないですか!今の小説までうちでやれるなら最高ですよ。流石副編!」


編集長より前にそんな声が挙がる。誰もが自分達の新雑誌に賭けているのだ。それは私だって同じ事だ。


「そうか…今のもうちでか。正直助かるよ、加奈子夕方会議がある。あんたも出なさい」


「会議って…編集長以上の役職のアレですよね?」


「そうだよ〈カヲル〉の件も出る。はっきりさせないと後々厄介だからね」


他の部員は不思議そうに私達の会話に聞き耳を立てていた。当然だろう、雑誌の目玉が確定して尚且つ相乗効果が期待できる出版の話迄獲得したのだ。


本来ならばもっと嬉しそうにしているべきだった。


「どうしちゃったんですか?編集長も加奈子さんも…」