そんな事を考えながらタクシーで会社に向かう。贅沢かも知れないけれど、昨晩からの疲れが押し寄せていた。


今ひとつ佐久間と云う男が掴めない、これ迄会った事のないタイプだ。


頭は間違いなく良いのだろう、仕事が出来る事は少し話せばわかる。


此れまでも、そうした男達には沢山出会ってきた。


けれども何かが違うのだ。あれだけの仕掛けをいとも容易くしておいてこれっきりで投げ出すと平然と話す。


あり得ない…上昇志向の強いだけの男ならば、そんな切っ掛けを次に繋げない筈はないのだ。


一見すれば華奢で童顔で…黙っていれば母性本能をくすぐりそうな感じなのに、彼の行動と印象が上手く繋がらない。


何かが引っ掛かるのはどうしてなのだろう。


会社が近くなると、そんな事も考えていられなくなってきた。


今は佐久間より、佐伯だ。