最初から佐久間の予想通りの展開だったのだ。


書籍化もコミックも、私が佐久間にお伺いをたてる事も彼は予測していた。


丁寧な文章で会社宛には、今後の交渉事を含めて一切を佐久間の事務所に移す事が書かれている。


それ以外の条件として〈カヲル〉と直接打ち合わせる必要がある場合には放文社からは、高邑加奈子のみとすると書かれていた。


その条件が呑めない場合、noxへも連載をしないと記載されていた。


編集長宛に書かれたものはもっと具体的だった。佐久間が先程私に言った映画のスポンサーへの挨拶の事だ。


会社も編集長も要求を呑むだろう。それだけの事で〈カヲル〉を独占することが出来るのだ。


気掛かりなのは佐伯の存在だった。コミックに関わるなら、あの男と少なからずやり取りが必要になる。


名誉挽回を狙っている事も厄介だ。特に私が担当者だと告げればいい顔などする筈はない。


小説に関しては左程問題はないだろうと思われた。書籍用に書き上げたと佐久間が言うのだからそれだけ自信があるのだろう。


佐伯の事を考えると気が重くなる。