佐久間はあっさりと言い放った。書籍、コミック、映画にまでなる作家――


一体、それはどれだけの人が望むサクセスストーリーなのだろうか？


信じられないと云った表情になってしまう私に、佐久間はぼそりと呟いた。


「まあ、目的は果たせそうだしな…」


「目的…一体何が目的なんですか？」


一瞬――僅かに佐久間の表情がしまった、そんな風に歪んで見えた。それでも直ぐに誤魔化す風に微笑んで口を開く。


「それはまあ、僕の個人的な事だよ。気にしなくて良いよ」


軽い口調だけれど、佐久間の目は私に質問は許さないと云った風に真っ直ぐに私を見ている。思わず目を逸らせたのは私の方だ。


「とっ…とにかく会社と相談させて下さい」


雑誌への連載と、連載作品の反響次第で書籍化する事の契約書を佐久間に手渡す。


此処まで来て手ぶらで約束も取り付けず帰るわけにはいかないのだ。


佐久間はさらりと書面に目を通して契約書に会社の印鑑を押した。


noxへの連載と反響を見て書籍化するとの契約書だった。


「連載と書籍化――これはOKだよ。僕からはこれを」


二通の書類は、会社と編集長宛だった。