「大丈夫だって。と云うかやって貰えないと困るんだよね、状況が変わったって感じかなぁ」


呆れるぐらいのんびりと佐久間が答える。冗談じゃない…写真だけならまだしも、それで誰かに会うなんてリスクが大きすぎるのだ。


「そんな…スポンサーに同行だとか無理ですよ!それに、佐久間さんだってご存知ですよね?コミックだって書籍だって全く編集部が別だって事ぐらい…」


当然の事だ、同じ会社の中だからといって別の部署である私に担当を任せる事など考えられない。


佐久間だってそんな事を知らない筈はなかった。どう考えても無理な条件なのだ。


佐久間は冷静な表情で私を見つめる、どうあっても引かないと云った風にしか見えなかった。


「まあ、そこは上手くやってよ。書籍の方はそもそもサイトが絡むから実際のやり取りは書籍の部門とサイトに任せれば良いよ。それにね、サイトに掲載する作品はもう完結してる。ついでに言えばノベル化用の原稿も仕上がってる。だから加奈子ちゃんの出番それ程無いよ」


「それなら私が余計に私が担当じゃ無くても…」



「ダメだよ。担当者が作家に会わずに出版なんてしないだろ?サイトにも君が〈カヲル〉として会って貰わないとね」


「そんな…いずれバレちゃいますって!」


どう考えても上手く乗り切れる自信はなかった。それが問題になれば困るのは私だけでは無い筈だ…


「その点は気にする必要はないよ。先の事は考えなくて良い。カヲルは――これっきりだから」