「私が質問したんですけど…例えば子供の頃から小説が好きで小説家になるのが夢だった…とか?」


「無いな…むしろ嫌いな方だったかな?」


「じゃあ、大人になってから好きになった?」


「いや、それも無い。職業としても憧れもしない」


「何だか…嫌ってるみたいな言い方ですね」


佐久間は私のその言葉に無表情なまま答えなかった。黙って珈琲を口に運ぶ。


「さて、打ち合わせしようか?」


肩透かしをくった気分だ、誤魔化されたのかも知れない。


「あっ、はい。これからの流れと契約に関して詰めさせていただきたいです」


事務的に幾つか内容を詰める。契約に関してはうちと佐久間の事務所が交わす事になった。


〈カヲル〉は佐久間の事務所に所属する形をとると言った。著作権も含めて今後そうした形で進めるらしかった。


確かにそれならば、正体は表に出る事は無い。