確かに佐久間の言う通りだった。時折のコメントも含めて小説に没頭していったのだ。


そんな事は関係ないと感じる読者も多いだろうけれど、読み始める切っ掛けにはキャラクターは大きな要素なのだろう。


ふと佐久間に聞いてみたくなった。仕事では評価され金銭的にも精神的にも不自由している様子もない。


それなのに何故性別や年齢を偽って携帯の小説なのだろう。彼ならば真っ当な手段で小説家としても売り出す事は出来たはずだ。


「あの…佐久間さん、質問しても良いですか?個人的興味なんですけどね…」


佐久間は意外にも嬉しそうな表情を浮かべた。


「個人的な興味。良いねぇ、何でも聞いてよ加奈子ちゃんになら答えるよ」


「あの…どうして小説なんですか?」


「どうして…ね。どうしてだと思う?」


一瞬だけ僅かに表情が歪んだ気がしたが、すぐに楽しそうな顔付きで問い返した。