「あっ…はい…」


几帳面な性格なのだろう、靴はきっちりと並べられている。慣れた手つきで私のスリッパを置くとさっさと部屋へ消えてゆく。


広めのリビングにはソファーとテーブル。シンプルで綺麗な部屋だった。思わず自分の部屋と比べてしまう。


壁際にデスクとノートPC、その一角だけが資料に溢れていた。


「悪いね。自宅へ呼び出して、〈カヲル〉の件は事務所じゃ話せないから」


「いえ、大丈夫です。それで…」


「ちょっと待ってくれる…先に目覚ましてからで良い?珈琲でも飲もう」


私の返事も待たずに立ち上がりキッチンへ向かう。


「砂糖とかミルクは?」


佐久間がそんな風にキッチンから聞いてくる。


「ブラックでお願いします」


そんな風に答えながら佐久間のデスクを眺める。資料に紛れて凡そ似つかわしくないカラフルなコミックが山積みになっていた。


しばらくして佐久間が珈琲を手に戻ってきた。


「佐久間さんコミックなんて読むんですねぇ」


佐久間は可笑しそうに笑って私を眺めていた。