指定されたマンションへ到着した。駅から五分程の道のりだった。


一月の風は冷たく、唯一剥き出しの頬は引きつっている。小綺麗だけれど予想外の印象だった。


何処かの会社が入居している様子もない。ともかくエントランスにあるインターフォンから部屋の番号を呼び出す。


「どうぞ」


そんな声が響きオートロックが外れた。エレベーターに乗り込み四階まで昇る。部屋番号を確認し呼び鈴を鳴らした。


「どうぞ…」


眠そうな表情とボサボサの髪、薄っすらと顔つきに似合わない無精髭。もちろん出迎えたのは佐久間だった。


「あの…事務所じゃないんですか?」


玄関先から覗く室内は、片付いているものの生活の匂いがする。佐久間の格好も慌てて着替えた風に見えた。


「ああ、自宅だよ。とにかく入ってくれないかな。寒くて仕方ない」