「君達3年生は受験がある。今まで通りの夏休みを過ごすのではなくちゃんと勉強して過ごせよ。」


わかってる。何度も同じ事を言うなよな~ 担任。


「じゃあ皆、また夏休みがあけたら会いましょう。解散。」


やっと聞き飽きた話が終わり、小さな溜め息をつきながらエナメルに教科書を詰め始めた俺、秋村拓也。


中学最後の夏休み。
クソ真面目に勉強しようなんて考えられないなと思っていたら

「一緒に帰ろう。」

親友の竹崎幸弘が俺の目の前に立っていた。
幸弘はメガネくんで成績も常に1位をとっている。


正門を出た俺達は最近ハマっている”ブルースカイ”という漫画の話をしていた。
あまり人気があるとは言えない漫画だが、俺にとってはこの漫画に出会えた事は運命だと思っている。

「なぁ拓也。アキラとヤズキのどちらにミチカは恋に落ちるのかな?」

「さぁ~…アキラとヤズキは親友だからな………あの2人の関係は崩れてほしくないな。」

アキラはブルースカイの主人公でその親友がヤズキで、アキラはミチカの事が好きになるんだが、実はヤズキも好きになるという結構ドキドキする青春漫画だ。




「なぁ、幸弘。」

「なに?」

「………わりぃ。やっぱ何でもねぇよ。」

「なにそれ。」


日が長い夏の大きくて綺麗な青空を眺めていた俺は急に胸が苦しくなった。
その気持ちをなんとか幸弘に伝えたかったのだがなぜか言うのを止めてしまった。