「そうそう、この前さ、
初めて親父とふたりで飯食いに行ったんだよ。」



「いつ?」



「蒼介がうちに来た日。

正確に言うと、

俺がバイトでいない日を狙って、

蒼介が挨拶に来て
親父に追い返された日。」



「………あ。」


ものすごく気まずい思いで
下を向くと、


お兄ちゃんはそんな私にかまわず
話し続ける。




「親父なんて、
蒼介の悪口いいながら

酒飲みまくり。


なのにさ、気づけば、

俺のガードがゆる過ぎるから
こういうことになるんだって、

酔っ払った親父に
最後は俺が散々説教されてさ。

で、モモには手土産
買って帰ってんだぜ?

意味わかんねぇつうの。」



「あ、あのお土産……。」



蒼介さんがうちに来た翌朝、

大量のデザートが
冷蔵庫に入ってたっけ…


「おかしいだろ、マジで。」



「なんだか、
いろいろとごめんね」



さすがにお兄ちゃんに申し訳ない…



「ま、いいけどさ。
蒼介の過去なんて気にしてたら
あいつとつきあってらんないから
あんま気にしないほうがいいぞ。」


そう言ってお兄ちゃんは
いつもの柔らかい笑顔を私に向けた。




と、外へ出ようとしたお兄ちゃんを
思わずまた引き止めてしまった。