「佐伯さん、どうしたの?
なにかあった?」



ノートから顔を上げた葉山くんが、

いぶかしむような視線を私に向けた。



また蒼介さんのことを

悪く言われたら、嫌だ。





「葉山くんの好きな女のコって…」




蒼介さんの話にならないように、

話題をそらした。




「佐伯さんと同じ学校の一年生」



「そっか」



葉山くんと話しながらも、

蒼介さんのことが


頭から離れない。





「1度会う機会があったんだけど
キャンセルされて、それっきり。」




「私の知ってる子なら、
チカラになれるかもしれないけれど」



正直、今は自分のことに
いっぱいいっぱいで。




「名前までは教えないよ。

佐伯さんも応援してね。
数学教えるかわりにさ」



「うん…」




ここで、悩んでるよりも、

少しでも早く蒼介さんに会いに行こう。


そう思って、席を立った。