授業が始まるまでまだ時間があったので

トイレに行きパウダールームで
髪の毛を直していると

ザワザワと話し声が聞こえてきた。


「金曜、蒼介来るって聞いた?」


そうすけって……、

もしかして………蒼介さん…?


髪の毛をとかしていた手が止まる。


「へー!結局来ることにしたんだ?」


「真由香さんが来るからじゃない?」


「あー、真由香さん綺麗だもんねぇ。
まだ未練あんのかもね、蒼介も。

蒼介がふられたんでしょ?
別れた後もかなり真由香さんに
つきまとってたっていうよね。」


真由香さん……?

振られた?


「なんか蒼介が珍しいよね?
っていうか、蒼介がくるなら
女子率上がりそう…。」


一際高く響くその声は、

賑やかな人混みのなかにいても、

嫌でも耳に届いてくる。


「その蒼介なんだけどさ
最近、毎朝、
西学の美少女と一緒にいるとこ
見かけるんだよね。」



「西学って、あの西学?」



「そ、西学の3年。
去年のミス西学だよ、あの子。
確か、読モやってるコじゃないかな。」



「蒼介、展開早すぎっ………」




遠のいていく話し声を聞きながら、

鏡のなかの幼い自分の姿を、

ぼんやりと見つめた。