「じゃあ、言うね。」
來世はふう、とため息をもらす。
だから、焦らすなよ。
そんな事を思いながら、私はゴクリと喉を鳴らす。
「僕は好きな人がね…。」
來世がふう、とため息をもらす。
やはり、誰かに好きな人がいるかを言うのは緊張するだろう。
私だって、誰かに言うとなれば緊張する。
「………いるよ。」
來世は少しばかり掠れた声でそう言った。
その言葉を放った來世の耳は赤くなっている。
その姿が可愛いと思うのと同時に、胸がズンと重くなった気がした。
「ふうん、そうなんだ。」
私は素っ気なく、そう答えた。
「ふうん、ってなにさ!!
僕、すっごい緊張したんだからね。」
少しむすっとしながら言う來世。
胸がジクジクと痛む。
今、私は來世に“だって、意外でさ。”としか返せない。
“………いるよ。”
そう言った來世が少し遠く感じた。