メイドが呪文を唱えるとカチリ、と鍵が開

いた音を立てるとすかさずメイドは重い鉄

の扉を開けて扉の向こう側へフィーナを誘

導して自身もすぐにフィーナの傍に行くと

すぐに呪文を唱えた直後、錠が落ちる音を

立てた。

そしてまた違う呪文を唱えると石壁に立て

掛けられている消えていた松明に次々と火

がついていく。

「この道を抜けると城の外れの森に出ま

す。一旦、町へ行きましょう」

「はい」

出口から吹き抜ける風を感じとりながらメ

イドとフィーナは出口へと走り続けて森に

出たところで一息ついた。

フィーナは長い金の髪を片手で押さえてふ

と振り返って城を見るとかなりの火の手が

上がり、落城するのも時間の問題である事

は見てとれた。

「父様、母様、兄様…」

彼女の碧い瞳には涙が溢れていた。頬を流

れ落ちる涙を拭う事なくメイドと共に城下

町へと足を進めた。