それから僕らは散歩に出掛ける。
水玉模様の傘の事なんて忘れてさ。
僕らはいつも手をつないでいたいのに、君は手のひらまで隠してしまう袖の長い服が好きだから、僕はいつも君の指を探すんだ。
「あ。見つけた。」
ふいに君がしゃがみ込む。僕の指をふりほどいてさ。
「この花。知ってる?」
…知らないよ、花の名前なんて。
僕は君の明るい笑顔しか知らないんだ。
「レインリリーっていうんだよ。雨の後にたくさん咲くのよ。可愛いね。だいすきなのよ。レインリリー。」
…レインリリー。
覚えておくよ。
僕には、どこの家の軒先にも咲いてるような、ありふれた花に見えたけれど。
君をこんなに可愛い笑顔にさせる花。
覚えておくよ。
レインリリー。