どうせ死ぬなら悠真の前で死のう。



大切な人ではないかもしれないけど、少しは悲しんでくれるよね?



あぁ。最後に尚と笑の笑顔が見たかった。

……二人が幸せなら、わたしは別に良いんだよ。



お母さん、お父さん、何も話せなくてごめんね。



意外に最後に思うことって少ない。あぁそれだけの思い入れしかなかったってことか。

わたしの人生は、それだけのものだったんだ。


雨がポツリポツリと降ってきた。

雨……死ぬには最適だね。




「さようなら」




誰にも聞こえない声で呟く。

赤の歩行者用信号。車が多く行き交う中わたしは飛び出した。


「春……‼︎」



「は…る。春、何で……こんなこと……に。俺のせい……だ、俺が嘘を吐いたから」


「優……なんて、どこにもいないんだ……。

俺はただあのときすぐに春を助けれなかった偽善者の俺と、一目散に駆けていったあの純粋に優しいあの男の子を比べて嫉妬してただけ……だ」



「何でこんなことに……春…春‼︎」



ーー…