アレンが家に入るのを見届けると、ガブリエルはアレンの家の裏手にまわり、壁にもたれかかりました。そして赤い瞳の代わりに貰ったアレンの黒い綺麗な瞳を愛おしそうに見つめます。

「本当に綺麗だ。いっそ食べてしまおうか」

ガブリエルは瞳に顔を近づけ、ペロリとそれを舐めました。

「まあ、食べないけど。美味しくないし、それに勿体無い」

そう言うとガブリエルはアレンにあげた瞳が入っていたのとは逆のポケットからナイフを取り出し、手の上でさっくりと半分に切りました。ぽたり、ぽたりと切り口から溢れ出した水が掌から落ちていきます。

ナイフをしまったガブリエルは神経の束を持ち、後ろ側の半球をうっすらと積もった雪の中へ放り投げました。