「ふざけんなよ。」

あれから少したって、季節は秋になった。
秋になって浮かれていたのか、あたしはハルの1番嫌がることをしてしまった。

「ハル」
「なに」
「紅葉祭、一緒に行こう」
「なに、いまさら。毎年一緒に行ってるでしょ。」
「うん、でも今年も誘いに来たの」
「紅葉祭、混んでるし暑いから好きじゃない。」
「行かないの?」
「検討中」
「えー、行こうよ~」
「ルナの予定のために俺はいるんじゃないの。」

「なんでさ!ハルのKY!」

「は?」

「え、あ...」

「空気読めってか?ふざけんなよ。調子にのんな。ぜってぇ行かねぇ」

ピシャンとシャッターを閉められた気分になった。
あたしはなんでか言わなくてもいいような事を言ってしまう。
口から零れちゃうって言うか、唾液みたいなもので気を抜いたら口から出ちゃうのだ。
仕方がない。言葉を覚えるってそう言うことなんだから。
とはいえ、誰かを嫌な気持ちにさせて仕方が無いって言ってたらただのクズ人間になっちゃう。
だからあたしはハルの家の前にたってるのだ。
「よし、殴られるの覚悟で...」
決意を口に出すつもりはなかった。
でも、口から零れた。

「誰も殴らないよ。何の用?」

ハルだ。
あー、またやっちゃった。口から零れた。
正直者ってあたしみたいなこの子と言うんだ、絶対。
「さっきはごめん!」

その後に”言うつもりはなかったんだけど”なんて付けたしたらきっとハルはもっと怒ると思ったから言わなかった。

「別にいいよ。」

すんなり許してもらえた。

「じゃあ紅葉さーーー」
「ルナと祭りには行かないって決めただけだから。怒ってないよ。」

冷たく突き放された感覚。

喉の奥がつったみたいに痛い。
声が声にならない。

「あらルナちゃん、いらっしゃい。
そんなところで話してないであがっていきなさいな。」

おばさんがあたしに言った。

でも、この状態から足を動かすことも口を動かすことも出来なかった。

首を横にフルフルと振って頭を下げた。
その後ハルの顔を見たらとても冷たい顔をしていた。
あたしは怖くなってそのままクルリと方向転換して家の方へ足を進めた。
ハルに嫌われた。ハルに嫌われた。
頭の中はその単語がギッチリ占領していた。