その日はただただ空をみてた。
辛い現実を見たくなくてーー。
昨晩、ハルの容体がおかしくなった。
小学校6年上がりたて。
5月20日。
水曜日。
12時50分。
昼休みだって言うのにあたしは空を見てる。
教室にいるのは七宮光とあたしだけ。
「...はぁ。ハル...大丈夫かな...」
「古松!」
後ろから肩を叩かれた。
「七宮...君?」
「俺はひーくんっ!ひーいくん!」
「ひーくん?」
「そそ!俺の名前呼ぶと口がにってなるだろ?
その方がいいよ!古松!」
「ッ...ッえっぐ...う...ぅぅッ...」
「わわっ!泣くなよ...!大丈夫だから!」
あたしはひーくんに不安だった事を話した。
きっと聞き取れなかった所もあったと思う。
でもひーくんは真剣に聞いてくれた。
そのときも結構な男性恐怖症だったけど
ひーくんは大丈夫だって思った。
思ったからこそ、少しの間ひーくんが好きだった。
「そっか、稻葉の事が心配なんだな。
大丈夫だよ!稻葉は頑張ってる!
あいつほど負けん気の強い奴はいないよ!
古松も頑張って応援して稻葉の帰りを待ってやらないと!な?」
あたしはひーくんの言葉に元気付けられた。
「ありがと...」
「って事があったの!ハル!」
「へぇ...よかったじゃん。」
えへへと笑うあたしをハルはどんな顔で見ていたんだろう。
「ルナ。」
「なぁに?」
クルッと振り返ったあたしの顔を両手で押さえつけた。
「いはいよはう...(痛いよハル)」
「ルナが七宮のこと好きなら、俺応援するから。」
このとき既にハルはあたしの事を想っていてくれたんだ。
でもあたしはとても残酷な言葉を吐いた。
「えへへ、いや~好きとか...えへへ
ありがとっ!ハル!」
ハルはニッコリ今までにない笑顔を見せた。
それからハルが退院した。
ひーくんはあたしによかったな!と笑いかけてくれた。
「ひーくんがいてくれたから!
あたし頑張れた!ありがとう!」
「おうおうー!古松は素直で可愛いな!」
ひーくんが頭を撫でる。
気持ちいい。
目を細める。
「稻葉!退院おめでとう!」
「...」
フイッとハルはそっぽを向いて歩いて行ってしまった。
「ありゃ。俺なんかしたかね?」
「ひーくんのせいじゃないよ!
ハルはみんなにあんな態度だよ!」
「古松以外には、な?」
「え...?」
「稻葉の信頼してる奴って古松だけじゃん」
あたしの事をハルが信頼...?
「ないない!ないよ!
だってハルはあたしに嫌味しか言って来ないよ?
ルナはバカすぎる~とか、ルナの腹は底なし沼だ~とか!!」
「でも稻葉が話すのって古松だけじゃん?
嫌味言っても離れないのを知ってるから言うんだよ、きっと。
俺は...そう思うな。」
ひーくんがあたしの頭を撫でて言う。
そう言えばハルが他の人と話してるのって見たことない。
先生と話すときもあたしが隣にいる。
あたしがいない所で誰かと話してる?
ハルに視線をやると女の子が机を囲んでた。
「でもまあ、稻葉もモテるんだよな~」
どんな話をしているんだろう。
ひーくんがあたしの手を握った。
びっくりして振り返るとニッコリ笑ってハルの机まで引っ張って行った。
ひーくんはあたしがハルを好きだと思ってるんだ。
違うのに。
ひーくんが好きなのに。
ひーくんの事好きで仕方ないのに。
「あー!ひかる!あたし以外の子と手繋ぐとかありえないっ!」
「ごめんごめん。
ほら、古松行っておいで?」
背中をポンッと押された。
ハルの前に無残に押し出されて、女の子は散らばって行く。
あたしはハルの顔を見ながら目を赤くしていた。
ハルが席を立って廊下にあたしを連れ出した。
「あいつ...七宮は付き合ってる奴いるんだよ。
小学生の付き合うとかは親友みたいなもんだろうけどさ。」
それでも...
「あたしは...」
「それほど...泣くほど好きだったんだな。」
ハルに言いたいことを言われて涙が溢れて止まらない。
「ハル...あたし...ひーくんの事ねッ...」
ハルはあたしの涙をゴシゴシハンカチでこする。
「おいで」
一言つぶやくと水道場に連れて行かれた。
「顔洗いなよ、ブサイク」
あたしは必死に違うもん!!と言いながら顔を洗った。
ハルなりの優しさだって気づいていたから。
「ルナ何やってんの。」
「ハル、あの雲クジラみたい」
「クジラなんてみたことあるの」
「ないよ。でもあるよ。」
「どれ」
「あれ」
あたしは空を見る。
青い空と真っ白な大きい雲があると嬉しくなる。
たまに細い飛行機雲を見つけると足踏みをしたくなる。
ハルは外が好きじゃないからあんまり空とかは見ない。
だからあたしが目せてあげなければ。
高校生になった港西高のこのA棟は見渡す限り青空。
それが嬉しくて最近良く空を見る。
ひーくんの事を少し思い出して。
でもハルと言う大切な存在を近くに感じながら。
辛い現実を見たくなくてーー。
昨晩、ハルの容体がおかしくなった。
小学校6年上がりたて。
5月20日。
水曜日。
12時50分。
昼休みだって言うのにあたしは空を見てる。
教室にいるのは七宮光とあたしだけ。
「...はぁ。ハル...大丈夫かな...」
「古松!」
後ろから肩を叩かれた。
「七宮...君?」
「俺はひーくんっ!ひーいくん!」
「ひーくん?」
「そそ!俺の名前呼ぶと口がにってなるだろ?
その方がいいよ!古松!」
「ッ...ッえっぐ...う...ぅぅッ...」
「わわっ!泣くなよ...!大丈夫だから!」
あたしはひーくんに不安だった事を話した。
きっと聞き取れなかった所もあったと思う。
でもひーくんは真剣に聞いてくれた。
そのときも結構な男性恐怖症だったけど
ひーくんは大丈夫だって思った。
思ったからこそ、少しの間ひーくんが好きだった。
「そっか、稻葉の事が心配なんだな。
大丈夫だよ!稻葉は頑張ってる!
あいつほど負けん気の強い奴はいないよ!
古松も頑張って応援して稻葉の帰りを待ってやらないと!な?」
あたしはひーくんの言葉に元気付けられた。
「ありがと...」
「って事があったの!ハル!」
「へぇ...よかったじゃん。」
えへへと笑うあたしをハルはどんな顔で見ていたんだろう。
「ルナ。」
「なぁに?」
クルッと振り返ったあたしの顔を両手で押さえつけた。
「いはいよはう...(痛いよハル)」
「ルナが七宮のこと好きなら、俺応援するから。」
このとき既にハルはあたしの事を想っていてくれたんだ。
でもあたしはとても残酷な言葉を吐いた。
「えへへ、いや~好きとか...えへへ
ありがとっ!ハル!」
ハルはニッコリ今までにない笑顔を見せた。
それからハルが退院した。
ひーくんはあたしによかったな!と笑いかけてくれた。
「ひーくんがいてくれたから!
あたし頑張れた!ありがとう!」
「おうおうー!古松は素直で可愛いな!」
ひーくんが頭を撫でる。
気持ちいい。
目を細める。
「稻葉!退院おめでとう!」
「...」
フイッとハルはそっぽを向いて歩いて行ってしまった。
「ありゃ。俺なんかしたかね?」
「ひーくんのせいじゃないよ!
ハルはみんなにあんな態度だよ!」
「古松以外には、な?」
「え...?」
「稻葉の信頼してる奴って古松だけじゃん」
あたしの事をハルが信頼...?
「ないない!ないよ!
だってハルはあたしに嫌味しか言って来ないよ?
ルナはバカすぎる~とか、ルナの腹は底なし沼だ~とか!!」
「でも稻葉が話すのって古松だけじゃん?
嫌味言っても離れないのを知ってるから言うんだよ、きっと。
俺は...そう思うな。」
ひーくんがあたしの頭を撫でて言う。
そう言えばハルが他の人と話してるのって見たことない。
先生と話すときもあたしが隣にいる。
あたしがいない所で誰かと話してる?
ハルに視線をやると女の子が机を囲んでた。
「でもまあ、稻葉もモテるんだよな~」
どんな話をしているんだろう。
ひーくんがあたしの手を握った。
びっくりして振り返るとニッコリ笑ってハルの机まで引っ張って行った。
ひーくんはあたしがハルを好きだと思ってるんだ。
違うのに。
ひーくんが好きなのに。
ひーくんの事好きで仕方ないのに。
「あー!ひかる!あたし以外の子と手繋ぐとかありえないっ!」
「ごめんごめん。
ほら、古松行っておいで?」
背中をポンッと押された。
ハルの前に無残に押し出されて、女の子は散らばって行く。
あたしはハルの顔を見ながら目を赤くしていた。
ハルが席を立って廊下にあたしを連れ出した。
「あいつ...七宮は付き合ってる奴いるんだよ。
小学生の付き合うとかは親友みたいなもんだろうけどさ。」
それでも...
「あたしは...」
「それほど...泣くほど好きだったんだな。」
ハルに言いたいことを言われて涙が溢れて止まらない。
「ハル...あたし...ひーくんの事ねッ...」
ハルはあたしの涙をゴシゴシハンカチでこする。
「おいで」
一言つぶやくと水道場に連れて行かれた。
「顔洗いなよ、ブサイク」
あたしは必死に違うもん!!と言いながら顔を洗った。
ハルなりの優しさだって気づいていたから。
「ルナ何やってんの。」
「ハル、あの雲クジラみたい」
「クジラなんてみたことあるの」
「ないよ。でもあるよ。」
「どれ」
「あれ」
あたしは空を見る。
青い空と真っ白な大きい雲があると嬉しくなる。
たまに細い飛行機雲を見つけると足踏みをしたくなる。
ハルは外が好きじゃないからあんまり空とかは見ない。
だからあたしが目せてあげなければ。
高校生になった港西高のこのA棟は見渡す限り青空。
それが嬉しくて最近良く空を見る。
ひーくんの事を少し思い出して。
でもハルと言う大切な存在を近くに感じながら。