高野先輩がモテる理由を

見付けるのは

簡単。


王子様の見た目に

この優しさ。


歯が浮くような台詞だって

先輩から発せられれば

それが冗談でも

誰の心でも落とせるはず。


何処にでもいるような

普通の女の子の私には

高野先輩との時間は非現実的。


夢の中にいるみたいで

胸の高鳴りとともに

ポーッと先輩を見詰めちゃう。


テレビの中の芸能人のような

遠い存在。



『佐伯さん

一人で逝かすのはイヤだから

死ぬ時は一緒に死のうね』

『抱っこしててあげるから

怖くないよ』

『する?今、抱っこ』


『佐伯さん、聞いてる?』

『あ、ごめんなさい。

何でしたっけ、

あ、死ぬ話でしたね。

私まだ死にたくないんで

生きる方を選択したいです』