苦しそうに眉を寄せる先輩。
真剣な瞳には
いつもの穏やかさなんてない。
先輩の余裕のない瞳。
少しの間
その瞳で私をみつめると、
ゆっくりと先輩は
言葉を紡ぎだした。
『その人を好きだって気付く
きっかけってなに?
俺、佐伯さんにそう聞いたことが
あったよね?』
うん、
あれはまだ私が彼を想っていたころ。
恋をする相手には困らないであろう
先輩から
そんな基本的な質問をされて
『先輩の方が知ってるじゃないですか』
って茶化したの。
でも、先輩の瞳は教えてと
そう言っているようで、
『佐伯さんは
気付いたら好きになってるものだって
言ったよね』
気付いたら
好きになってるものですかね。
運命なんじゃないでしょうか。
決まった人生の流れ。
私の人生に必要な人。
だからいつの間にか
惹かれて
求めるようになるんじゃないですかね。
『人は一人では生きていけない。
支え合って
想い合って
対当に生きていく。
苦しいこと悲しいこと
それすら分かち合いたい。
いつもどんなときも
傍にいるのは
自分であってほしい。
そう気付いたときには
手遅れなんです。
それはもう
好きなんですよ』