この手を離せば
先輩との繋がりはなくなってしまう。
約束が無くても
毎日逢えたあの場所も、
右上がりの癖のある文字で
勉強を教わることも、
佐伯さんと呼ぶ声も、
あの笑顔も、
あの言葉も。
全部、全部
なくすことにことになる。
じゃ、同情で傍にいてもらうの?
可哀想な子と、
憐れまれたまま傍にいるの?
やっぱり先輩は遠い人。
私には理解が出来ない世界で
生きている人なんだ。
離そう。
元の場所へ戻るだけ。
元のたち位置へ帰るだけだ。
『ムカつく』
『っ』
『力入れてんじゃねーよ』
『離してっ』
『痛いの?
痛がればいいよ。
もう、着いたし』
鍵を開ける音がする。
ガチゃとドアを開けると
私をポイっと投げ入れた。