その一言を皮切りに不良達は飛び掛かる。
『舐めてんじゃねーぞォォォォオオ!月狼!!』
『ぶっ潰す!』
鉄パイプを構え、物凄い勢いで走って来る不良達。
それでも、男は動かず、ただ笑っていた。
(なぁ、知ってるか?)
(あ?何をだよ)
男は笑って、足で空気を斬 り 裂 い た。
シュッと音の鳴るくらい勢いのある足。
鉄パイプを振り下ろそうとしていた男の腹へ、そして男を吹っ飛ばす。
(月狼って奴のこと)
(ツキロウ?)
『弱ッ……』
笑いながらも、また一人。
———ドサッ。
———ドカッ。
(すっげー、喧嘩強くてさ、)
(糞イケメンだけど)
(だけど?)
——……倒れていく。
返り血を浴びながら妖美に笑う彼は、正に……
(アイツに会ってもぜってぇー、目を合わせンなよ)
(は?)
(“殺られる”からな)
オ オ カ ミ
そのものだった。
『……全て、全て闇に呑まれてしまえばいいのに』
月が出る夜にしか現れないといううわさの彼は、
憎々しげに空を見上げて
そう吐き捨てた———……。