月明かりだけが頼りの真っ暗な路地裏。
『——……ハッ』
しつけぇな、と口の中で文句を言いながら逃げる男がヒトリ。
風のように走る。
突風のように走り抜ける、その男。
……行き止まり、か。
“彼”は長い足を動かすのをピタリと止めて、立ち止まった。
『クソじゃねーの』
毒づきながら薄い笑みを浮かべ、男はゆっくりと振り向く。
振り向いた先には、十数人の……如何にも柄の悪そうな不良達。
ついでに言うと、鉄パイプなんて物騒な物を握りしめている。
血走った目。
まるで、“男”を殺してしまいそうな……そんな目だった。
ハハッ。
それを見た男は堪らず目を細める。
———それで、俺に勝てるとでも思ってンの?
男は狂ったように笑う、嗤う。
そう、“ 狂 っ て る ”。
『かかって来いよ』