「今回は、事件性がなかったと言うことにしましょう」

伊地知さんが口を開いた。

「えっ、さっき手錠をかけたじゃん」

驚いたと言うように言った上野さんに、
「彼も深く反省をしていますし、もう2度とこんなことはやらないでしょう」

伊地知さんは言い返した。

「人生は長いです。

当然、つらいことや苦しいことはたくさんあります。

その中で、前を向いて生きていくことが大切なのではないでしょうか?」

小さな子供を諭すように、伊地知さんが窃盗犯に言った。

「あたしも、そう思います」

あたしは言った。