確かに食べ物限定で、しかも1つずつ盗んでいるとなると、窃盗犯は単独なのかも知れない。

「何かありましたら、必ず連絡をください。

間違っても犯人には立ち向かわないようにしてください。

では」

あたしたちに敬礼をした後、伊地知さんは立ち去った。

「結構若いヤツを配属させたんだな」

伊地知さんの後ろ姿が見えなくなると、上野さんが言った。

「俺らと同い年じゃねーか?」

安部さんは笑いながら言った。

「それよりも、気をつけましょう」

そう言ったあたしに、
「ああ、窃盗事件ね」

上野さんは思い出したと言うように言った。

「んじゃ、俺たちもそろそろ仕事を始めますか」

そう言った安部さんにあわせるように、あたしたちは店の中へと入った。