さくらさんはあたしの方を見ると、
「はい、どうぞ。

気に入ったものがあったら言って。

なかったら、もう少し出すから」
と、言った。

「あ、はい、ありがとうございます」

あたしはさくらさんの手によって並べられた5枚の浴衣を見つめた。

1枚目は白地に赤い金魚の柄の浴衣。

2枚目は紫地に睡蓮の柄の浴衣。

3枚目は藍色地に花火の柄の浴衣。

4枚目は紺地に蝶々の柄の浴衣。

5枚目は黒地に…柄はたぶん花だと思うんだけど、何の花なんだろう?

「さくらさん、この花って…」

5枚目の浴衣を指差したあたしに、
「ああ、これは撫子って言うの」

さくらさんが説明してくれた。