今日は久々になんの用事もない休日だ。
そのせいか、少し寝坊したみたい。
Tシャツにカーゴパンツを合わせただけのラフな格好だけど、まあいいか。


「沙織、ご飯食べよう」

下からお母さんの声がする。
はあい、と返事をして、階段を降りると、既にフルーツグラノーラと牛乳がテーブルの上に乗っていた。

「顔洗ってくるからちょっと待ってて」

「早くしなさいよ」

「はーい」

洗面所に行き、小窓を開けると、綺麗な青空が広がっていた。



―この空を見るたび、貴女のことを思い出すよ。



そっと心の内で呟く。


あの微妙なショートヘアー、少しふっくらとした体型、可愛いというよりは美人な顔つき。

時折見せるラフな笑いが私を安心させていたなんて、貴女は気付かなかったでしょう…?



あの人のことも思い出す。

立ち方がどこか不自然で、けっこうな凝り性で、だけど真剣なまなざしが私を捉えた時、どきりとした。




2人はどうしているだろう。


彼女は1人でちゃんとやっているだろうか。

彼はきっと、何とかしているのだろう。





「沙織!早くしなさい!」





「…はーい!」







どうにせよ、私の方からは何も言えない。



言わなくて、いい。