ー6年前
ある夏の日のことだった。
私はいつものように妹のリンと一緒に寝室にいた。私達は姉妹で、私は今年小学生になったばかりだった。
「おねえちゃんほんよんでー」
リンが本をせがんでくる。
「わかった。なんの本がいいの?」
「んーと、あれっ!」
「これだね」
「うん!」
私はリンに頼まれた本を取ろうと立ち上がった、そのとき
ーガシャン
部屋の外からなにか落としたような音がした。
「なんだろー?」
妹が立ち上がり扉に手を掛けた。
「ーだめっ」
反射的に私はそう言っていた。このとき私は言い知れぬ不安で胸が一杯だった。
「おねえちゃん?」
それが伝わったのかリンが不安がっている。
「リン、こっちきて」
「うん」
取り敢えずリンを近くに呼び寄せると思考を巡らせる。
(なにがあったんだろう?)
考えているうちに物音はひどくなっていく。
「おねえちゃん、こわいよう」
ートントントン
廊下を歩く音が聞こえる、段々近づいてきている。
ーガチャ
扉が開く。そこには、
「ーとう、さん?」
薄ら笑いを浮かべ、大量の返り血を浴びた父さんの姿があった。
「みぃーつけた」
静まり返った室内に父さんの楽しそうな声が響いた。