その不器用な優しさが、嬉しかった。
あたしがよく池の前で泣いてることを透のお母さんに知られているのは嫌だけど。
でも、それでもいいやって思える。
きっと、今透が言ったように、透はお母さんに言ってないと思う。
信じてるから、透のこと。
透は、そんな人じゃないから。
あたしが泣いているのは、仮にも神社の中。
透のお母さんが偶然見てしまったってこともあるだろうし、もしそうじゃなくても透は分かりやすい人だから、簡単にバレる気もする。
だから、別に気にしない。
それよりも、きっと今も胸を痛めているであろう透が、今もあたしのことを気遣ってくれてることが、すごく嬉しい。
さっき見たあの悲しい顔を見たからこそ、余計にそう思えた。
だから、あたしはゆっくりと顔を上げ、にこっと微笑む。
「大丈夫!……へへっ、それよりも透のお母さん、本当に綺麗な人だね」
「えっ?ああ、うん……」
透は拍子抜けしたような表情を見せた。
そんな透を見てくすっと笑った後、今度は再び透のお母さんの方を向く。
「あの、あたし、櫻井叶恋と言います!透さんとはまあ、友達って感じです」
「えーっ!彼女じゃないのー?」
「はい、違います。あたしにはちゃんと好きな人がいるので。透には、その相談をしてたって言うか……」
「……ふふっ、透じゃいい相手になんないでしょ」
「まあ?」
そんな会話をした後、あたしと透のお母さんは同時に笑い出した。
「ふふっ、面白い子ね。あ、そうだ!今丁度クッキーを焼いた所なの。一緒にどう?」