「……なんか、すっきりしたなぁ」


「そっ?まあ、俺で良ければいつでも」


 透はそう言いながら膝を立て、どこかのおとぎ話の王子様がするようなポーズをした。

 それが結構似合ってるのが、なんかずるい。



「ふふっ、変なの。じゃあ透も、いつでも言って来てね」


「え?」


 透は立ち上がりながら不思議そうに聞き返す。



「辛くなったら、いつでも聞くよ。聞くことしか出来ないけど、それでもいいなら」


 あたしはにっこりと微笑む。

 透もその言葉を聞くと微笑んで、

「おう、ありがとうな」

 って言った。




「じゃ、掃除しますかぁ!」


「いいって、俺一人で十分」


「ううん、あたしがしたいだけ」


「ははっ、じゃあよろしく」



 透がそう言って、あたしにほうきを渡そうとする。


 その時。


「……透?」


 そんな透き通った声と同時に、綺麗な顔があたしの目に映った。

 透もあたしも目を見開く。


 そして透はゆっくりと口を開けると、

「……母さん」

 と、小さく呟いた。