「……で、あたしは聞こえない様な声でありがとうって言ったの。そうしたらね、どーいたしましてって。センセイにちゃんと聞こえてたの」


「……そっか」



 昨日ホームであったことを、一生懸命透にするあたし。

 透は池の水で遊びながら、優しく聞いてくれている。


 あたしは楽しく笑うけど、ほんの少し切なかったりして。



「また、好きになっちゃった……馬鹿みたいだねっ」


 無理矢理な笑顔。

 分かりやすい作り笑い。


 ねえ、透。

 貴方は、気付くんでしょ?

 あたしの笑顔の裏にある想いに。



「……別に、笑わなくてもいいよ。無理すんな」


 涙腺が緩んだ。

 鼻の奥がツンッと痛んだ。

 胸の奥が、微かに揺れた。



「うん……そだね」


「でもまあ、よかったじゃん。そういうのは喜ぶべきだと思う」


 透はすっと立ち上がり、あたしの頭に手を乗せた。


 そのせいか、あたしの瞳から一粒、涙が零れた。

 あたしは涙を手で拭って、立ち上がる。


「……へへっ、ありがとう透」

 そして、透に笑いかけた。