あたしが悲しまないように。

 傷つかないように。


 そういう小さな優しさが、嬉しかった。



「プシュー」という電車の音がホームに響いた。


「……ありがとう、ございます」


 だから、もしかしたら聞こえていなかったかもしれない。

 小さな言葉で伝えた、感謝の気持ちは。



 二人で電車に乗り込む。

 そして、扉が閉まった時。


「どーいたしまして」

 センセイが、そう口にした。



 いや、やっぱり違う。

 聞こえていた。あたしの気持ち。



「センセイ、あたしね……先生たちの中では、一番センセイが好きだよ」


 あたしはそう言って、センセイに笑いかけた。


 その言葉の裏に隠された気持ちは、

「マジ?やった♪」

 きっと届いていないと思うけど。



 ねえ、センセイ。


 この想いは嘘なんかじゃないから。

 ずっとずっと、想い続けるよ。



 叶わない、小さな恋を。

 あたしは、ずっと続ける。


 例え未来が、明るくなかったとしても。