また、また、また。

 こうやって、あたしの心を持って行く。


 ずるい、ずるい、笑顔。



 ねえ、センセイ。


 好きになったって見返りも何もないのに。

 どうして、センセイばっかを好きにさせようとするの?


 叶わない恋なのに。

 昨日よりもっともっと、センセイを好きになっていくの……




「……それ言ったら、奥さん泣きますよ?」


 センセイには決して目を合わせないで、そう言った。


 だって目が合ったら、あたしの気持ちが溢れてしまいそうで。

 センセイに、気付かれてしまいそうで。



「ははっ、だよなー……まあ、男はいつまで経っても若い子が好きなんだよ」


「キモ……」


「はあっ!?なんて言った!?」


「ふふっ」



 あの日以来、センセイと話すときに自然と笑みが零れたのは初めてかもしれない。



 単純に、嬉しかった。


 きっと、奥さんの方が綺麗に決まってる。

 でも、センセイはあたしのために嘘を吐いてくれた。


 優しい、嘘を。