「……そう、ですか」


「まあ、油断したら普通に笑ってるのと変わらなく見えるけど。でもやっぱり……作り笑いって、可愛くないもんな」


「可愛くない、ですか?」


「ああ、せっかくの美人が台無しだぞ?」


 センセイはあたしの頬をツンツンと突いた。



 〝美人〟……か。

 こんなあたしのこと美人だって思うなら、あたしの恋を叶えてよ。


 なんてまた、馬鹿なことを思ってる。




「……じゃあ、奥さんとあたしなら?」


 答えが決まっている質問ほど、虚しいものはない。

 だけど、ほんの少し持ってしまった期待が、意地悪な質問をしている。


 こうやって、自ら傷つくようなことしてさ。

 こんなあたしのこと、きっとみんな笑ってるよね。




「うーん……難しい質問だな」


「……やっぱ、いいです。変な質問して、すみませんでした」



 ホーム内に鳴り響いた電車の到着を知らせる音を聞いたあたしは、そう言って無理矢理会話を終わらせようとする。



「顔、なら……櫻井かな」


「え……っ」


 だけどセンセイはそう、笑顔で答えた。

 しかも、思いもよらない返答で。