「センセイって……ずるいですよね」


「……はあ?なんのことだよ」



 確か、あの時もそうだった。


 センセイはいつだって、大事なところはキメる。

 そして、あたしの心全てを奪っていく。



「っていうかさっき、なんて言いました?」


「さっき?」


 驚きすぎて聞き逃すところだったけど、ちゃんとあたしの耳は拾っていた。



「いつも俺にするような作り笑い……って」


 そのセリフは、まるであたしがいつもしている作り笑いに気付いているみたいに聞こえて。

 あたしの勘違い……だよね?



「ああ……本当は、言うつもりじゃなかったんだけど。」


「センセイは……気づいていたの?」


「……だって、担任ですから」



 センセイは優しく、何処か誇らしげに微笑んだ。


 胸が、大きく脈を打つ。



 やっぱり、センセイってずるい。


 なんだ。

 頑張って笑顔を作っても、センセイにはバレバレなのか。


 でもね、センセイ。

 あたしの恋心までは気づけないんだね。


 気づかれたらダメだから安心しなくちゃいけないんだけど、それでこの恋が終わるなら気づかれてもいいなんていう我が儘な気持ちもあって。

 どうしようもない感情に板挟みになる。