男達が消えてからも、あたしはまだよく理解できなかった。
でも、でも。
目の前にいるのは、明らかに。
「……ったく、嫌な奴にまで笑顔で話さなくてもいいんだよ。どうせ、いつも俺にするような作り笑いして……」
「な、んで……なんで、センセイがここにいる、の?」
〝センセイ〟……だった。
目を瞑った時浮かんだ、一番助けて欲しかった人が、目の前にいて。
誰も助けてくれなかったのに。見て見ぬフリだったのに。
センセイは……助けて、くれた。
一気に押さえていた恐怖が溢れだして、涙が零れ落ちる。
……もしかしたら、違うかもしれない。
センセイが助けてくれたことが、嬉しいのかも。
あーあ、ずるいなぁ。本当。
神様、どうして恋を叶えてくれないくせに、こんなことをするんですか?
酷い。ずるいや。
センセイも。神様も。
それに、意味のない、一瞬にして覚める夢のような幻にいちいち心を揺らしている自分も、馬鹿みたいだ。
「……泣くなって。丁度、今帰るところだったんだよ」
センセイは呆れた様に笑って、あたしの頬に触れ、指で涙を拭った。
それだけの行為にドキッとしちゃうあたし。