「なあ、透。」


 教室に入った瞬間、まるで俺を待ち伏せしていたかのようにドアに立っているクラスメイトが話しかけてきた。

 俺は少し驚きながら、返事をする。


「おはよ。どうしたんだよ、びっくりするだろうが」


 そう呆れた様に言ったのは、驚いたのを隠すためだ。


 話しかけてきたクラスメイト、というより中学から一緒にいるから親友のコウタの隣を通って自分の席に向かう。

 コウタは俺を小走りをしながら追いかけてきた。



「なあ、ちょっと……あのさ……」


 コウタは何故か、言いにくそうに視線を泳がせている。


 俺は鞄を自分の机の横に掛けた後、コウタの方を向く。


 そして、左手を机につきながら、

「なに?相談事でもあんのかよ」

 と言った。



 コウタは俺と違って、自分の思ってることをズバズバ言える明るい性格。

 だからか、友達が多い。


 そんなこいつが言いにくそうにしてるってことは……大分凄いことなんだろう。


「えっと、そういうんじゃ……いや、そうなんだけど…でも、あ、え」


「……はぁ、もういい。屋上でも行くか」



 言葉、噛み過ぎじゃねぇか。

 ここじゃ話せないだろうと思った俺は、ため息を一つ吐いた後、屋上に行こうと誘った。