あたしは、ゆっくりと顔を上げた。


「……とお、る」


 あたしは今日から、独りじゃないんだ。




 制服を着て、鞄を手に持って、透は悲しそうな顔をしながら、あたしを見下ろしていた。



「まーた、泣いてる」


 そう言って、透は悲しそうに笑う。

 そして、しゃがんだ。



「だって……」


「大丈夫、俺がいる」



 透はそう言って、あたしの頭にポンッと手を乗せた。

 優しく微笑んだ透に、透の優しい声に、涙腺が崩壊する。



「せんせっ……あ、たし」


 あたしは俯いた。


 馬鹿。


 神様の馬鹿。

 センセイの馬鹿。

 あたしの…馬鹿。


 こんな恋なんて、したくなかったよ。

 早く、終わってほしいよ。


 センセイに会わなければ、こんなことにはならなかったのに。

 なんで、出会っちゃたんだろう。


 どうして、貴方は先生なの?

 どうして、貴方は大人なの?



 もし、貴方がそうじゃなかったら、あたし達は付き合えたのかな?

 貴方は、あたしを好きになってくれたのかな?


 それとも、出会わなかったのかな?

 貴方が教師だから、出会えたのかな?