「……小さい頃、クリスマスはサンタさんがプレゼントをくれたよね」


 こいつは、そう呟いた。


 俺の前の父親は、クリスマスの時だけ優しかったんだよな。

 プレゼントをちゃんとくれてた。


 だから、クリスマスは好きだった。




「……ああ」


「あたし物欲なくてさー、いつもプレゼント何にしようかなーって迷ってたの」



 あ、なんとなく言いたいことが分かった。

 けど俺は、黙ったまま話を聞く。



「でも、今はあるんだよね」


「……欲しいもの?」


「そう、たった一つだけ」


 そう言ったこいつの顔は、とても悲しそうだった。




「……センセイ」


 ……やっぱり。



「…俺も、あるんだよ。……母さん」



 いつだって、俺らは。

 そうやって、願っている。


 だけど、知っている。


 たった一つだけの願い。

 他の物は望んでいない。


 だけど、この願いは叶わないことを。

 俺らは……。