でも、どうしても無理なんだ。

 考えられないんだ。


「俺は、恨んだよ。なんで家族なのかって。なんで引き取ったのかって。……母さんといると、すげぇ辛い」



 辛いだけだった。


 恋、なんて淡いものじゃなかった。

 醜く、叶わないと知っている苦しい恋だった。


 でも、何故か捨てられない。

 この恋を止めることが出来ない。




「俺、女って生き物がいなければなんてことまで思った。……だから、女と話したりしたくないんだ。女と話すと、母さんとこんな風に話せたらなんて思うんだ。中学生の頃は、母さんを忘れるため、色んな女を抱いた。……でも、その度に苦しくなった。辛くなった。だって、つい、母さんを重ねてしまうから。だから……それも止めた」



 これが母さんだったらって思うと、辛かった。


 俺は、女と喋ったりすると、母さんを思い出すんだ。


 母さんと喋るだけで、母さんを見るだけで辛いのに、母さんと重ねてしまう女達と喋ってこれ以上傷つきたくないって思った。

 これ以上、母さんを好きになって辛い思いをしたくなかった。



 これ以上、この恋を加速したくなかったんだ。




 なあ、お前はこの話を聞いてどんな顔をする?


 俺のこと、おかしいって笑うだろうか。引くのだろうか。


 それとも……



「……あたしたち、似てるね」