連れて来られたのは、神社だった。
俺は、いつかこの家を継がされるんだと、一瞬で悟った。
俺を引き取った人は、【速水】という人だということを知ったけど、顔とかはよく分からなかった。
俺は自分の部屋を貰って、そこにずっといた。
『ご飯よー?透くんー?』
そう言って、俺の部屋に入ってくる女。
えーと、新しいお母さんだっけな?
てか、お母さんってなんだ?
俺は母親というものに触れたことがなかったため、お母さんというものが分からなかった。
俺は、お母さんという人について行って、ご飯を食べた。
新しいお父さんという人は、仕事で忙しいらしく、一緒に食べはしなかった。
仕事……。
お父さんが仕事をするなんて、この時の俺は知らなかった。
なにも、知らなかった。
そんな自分に、俺はいつも驚いていた。
『あら?透くんってピーマン嫌いなの?』
そう言って、女は俺の皿に乗っている緑の野菜を指した。
また、俺は驚く。
この野菜、ピーマンって言うんだ……。