あたしの学校には、センセイよりもモテる男の子がいる。
名前は、速水透くん。
あたしと同い年なんだけど、きっとこの学校で知らない人はいないと思う。
それくらい、モテる人。
でも本人は女嫌いらしく、女の子と一緒にいるのは見たことがない。
そういうのに興味なく、知りたいと思わないあたしでもこんなに知っている。
もう、本当にモテてモテてモテまくる人。
あ、でも、誰も告白は出来ないらしいんだよね。
キュン死にするというのもあるんだけど、一番の理由は、あまりにも女子に冷たすぎるから。
みんな、確実にフラれると分かってるから告らない。
だから、みんなはファンという立場らしい。
速水くんは不思議そうに、
「……ポケット?」
「そう、ボタンないじゃん」
でも、ある日事件が起きたんだ。
ファンの中でも超ファンだという女の子二人が、速水くんのクラスが体育の授業中に速水くんのズボンのポケットのボタンを取ったらしい。
そのボタンは、ボタンを取った女の子達が持ってるらしい。
……こわっ!
最初に聞いた時、あたしはそう言ってしまった。
普通、ボタンなんて取れないから、あたしは速水くんだと気付けたんだけどね。