あたしは、すごい矛盾した恋しかできないのかな……。



「バキッ!」




 その大きな音に、あたしは驚いてしまった。

 それは、涙が止まるくらいで。


 ここはいつも静かで、人の気配すら感じられないんだ。

 なのに……。



「もしかして、誰かいる……?」


 あたしは立ち上がってゆっくりと音のした方に歩いて行った。

 そうしたら、角を曲がったところに、あたしの学校の制服を着た男の子がいた。




 あ、制服のズボンのポケットのボタンがない……。



 ……もしかして、


「……速水くん?」



 そう口にすると、男の子はあたしの方をゆっくりと向いた。


 その顔は、言葉にすると「どうしよう」って感じかな?




「なんで、お前俺を知ってんだよ……」


「え?だって、ポケット」



 この人、気づかないのかな?